world end after tale
「…一応ではあるが雷系の魔法だ。だが、最上級の魔法などみな、あのような形になる」
「…?」
「威力がありすぎて相手が完全に消失するんだ。またその時余波も辺りを吹き飛ばす程の威力がある。まともにやれば放った者も死ぬ。
ならばどうするかと言えば、同時に相殺しなければならないんだ。結果、見たようになるってこと」
全く分からないと言う顔をしているジャックに私はため息をはいた。
恐らくだが、ジャックは見たことがないのだろう。
これ程の魔法を。
無理はない。
人間同士の戦闘でこれ程の威力の魔法は必要ない。
初級の魔法でも相手を十分倒す、または殺す事ができる。
戦争などでは使われる事のないものなのだ。
「でも、魔法でアサルトケルベロスって倒せるんですね」
ジャックはもっともな事を言う。
普通なら倒す事など不可能とされている魔物だ。
異常に魔法耐性が高く、ほぼ全ての魔法が効果無い。
表皮も厚く頑丈な毛皮に被われているため打撃も効きづらい。
倒す事が不可能とされる魔物の一つだ。
だが、このアサルトケルベロス、戦いになることがまずない。
基本的に人間を食さない上、捕食以外の戦闘行動を行わない。
此方から攻撃を仕掛けても、相手にすらされない事も多々ある。
ケルベロスが産前、産後で子供がいる時位しか、戦いになることはないのだ。
「…妙だな…」
「え?」
「…この時期に子供がいるとも思えないけど…」
訳が分からないという顔のジャック。
それはそうだろう。
ジャックの質問には全く応じず、只、自問自答しているだけなのだから。
「どうかしたんですか?」
「………いや………」
「…なら、いいですけど…」
不服そうに言ってジャックは黙った。

この先に何か、待ち受けているかもしれない…。
私は少し強く拳を握りしめた。


それから数日が過ぎた。
馬車は確実に私をあの場所に連れていく。
あと数日もすれば着くだろう。
だが、あのアサルトケルベロスの事が気掛かりだ。
嫌な予感が拭えない。
久々に使う事になるかもしれない…グングニルを…。
そう思った時悪寒が走る。
「止めろ!」
私は叫んだ。
ジャックはいきなり大声を出されて驚きながらこちらを見た。
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