world end after tale
日が完全に暮れ、月が辺りを照す。
「まだ、歩くんですか?」
ジャックが遂に弱音を吐いた。
「野宿が嫌いなんだ」
私は応えた。
一人なら、次の町や何かしらの小屋等を見つけるまで歩き続ける。
言ってしまえば、野宿は恐い。
昔の自分を直視しなければならなくなる。嫌だ。
べったりと張り付いた血汗が服につくかのような不快な夢を見る。
そう、それは昔の私が感じていた不快。
私は戻りたくない。
あの日々に。
だから歩く。
私は人だから、屋根の無い所では寝ない。
そう決めたのだ。
だが、私の意思に反して、ジャックは限界そうだった。
私は小さくため息をつく。
「分かった、今日はもう休もう」
「え、でも…」
「次の町まではまだまだ長い。無理して身体を壊すのは得策ではないしな。私とて、お前を背負って歩くのはしんどいしな。それに、男としてはそれも嫌だろう」
「それは…そうですけど…」
分かっている。
女の私より先に根をあげた時点でジャックは自分がカッコ悪いと思っている。
だが、気に止める必要は皆無。
根本的に違うのだ。
人間ではないのだから…。

ジャックは木の根に寄り掛かると、すぐに寝息をたてはじめた。
よっぽど疲れていたのだろう。
それもそうだろう。
さっきの町を出てからほとんど休憩をしていない。
する気も無かった。
私はいち早く、あの森に行きたい。
名すら知らない私の家。
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