甘い心はあなた一色
「紗英子さ……」
俺が出て行く前に、誰かが紗英子さんのところに飛び出すのが見えた。
あれって、多部先輩――。
女の子達が去って行ったあとの2人をすぐ傍で見ていたのに、俺は出て行くことができなかった。
『今度紗英子に何かしてみろ。俺がただじゃおかねぇから』
こんな台詞を聞かされて、紗英子さんの涙と笑顔を見せられたりしたら。
――入れないよ、2人の間には。
こんなに想い合ってる幼なじみなんて、そうそういないよ。