甘い心はあなた一色
「紗英子のこと、泣かせんなよ?」
―――え。
「――はい」
いきなり言われたら、びっくりするよ。
まぁ紗英子さんは、今までもこれからも俺が守っていくけど。
「彼方……」
そんな多部先輩を見て、泣きそうになっている紗英子さん。
「おい、泣いたら不細工になるぞ」
「なっ……!」
「それじゃーな」
そう言って歩いていく多部先輩の背中は、大きく見えた。
今まで多部先輩が紗英子さんを大切にしてきた以上に、俺が紗英子さんを愛そう。
紗英子さんが嫌がって逃げ出したくなるくらい。大きな愛を注いであげたいんだ。