甘い心はあなた一色




「紗英子」



何とか教室に滑り込んで授業を聞いていたあたしに、彼方が声をかけてきた。



授業中だから口だけで、ん?と言うと。



「教科書見せて」



「――またぁ?」



この前だって見せたのに……仕方ないなぁ。



しぶしぶ机をくっつける。



「わりぃな、また忘れたんだよ」



「もう、いったいあんたのカバンには何が入ってんのよ」



っていうか、毎日何のために持って来てんのよ!


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