甘い心はあなた一色





「……ってあっ、パン焼いてるの忘れてた!」



そう叫んだかと思うと、タイミング悪く紗英子さんが俺から体を離した。



うわ、さすが紗英子さん。



無意識に俺を振り回す天才だ。



「朝ごはんもうすぐできるから、リビングに早く来てね!」



笑顔でそう言い残し、紗英子さんは寝室を出て行った。



まるで天使みたいな、可愛い白のエプロン姿で。



はぁ、と左手の拳を頭において、ベッドに横になる。



なんであんなに可愛いの……。



そこで気づいた、自分の左手。



薬指には指輪が光っている。



一瞬考えて、すぐに気づく。




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