籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
「マルセル……!?」
「まさか、お茶に何か……」
マルセルは悲し気なほほ笑みを浮かべて2人を見ながら眼鏡をはずし、自身の束ねた髪に手をやる。
「ごめん……ティアナ、アベル。許してくれ」
そう言って髪留めをはずすと、茶に染めていた髪は金色に戻り、服は蒼と金色のロングコートに変わった。
その胸にある紋章は……王宮のシンボル。
「そ……んな。どうして……」
呻くアベルの腕から、マルセルはアメジストを引き抜く。
そしてティアナの首から指輪を取ろうとし、ティアナは痺れた体で抵抗したが、それもむなしく抜き取られてしまった。
「さよならティアナ、アベル。もうこれ以上この指輪に関わらないでくれ」
目で必死に訴えるティアナと目が合い、マルセルは一瞬瞳を揺らしたが、さっと2人に背中を向けた。
ティアナはマルセルの名を叫びたかったが、痺れのせいでうまく口が動かせない。
「いや……行かないで……マルセル」
ティアナの声もマルセルには届かず、金色の髪を靡かせて街へ消えていった。