籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
「!!」
彼がそのマントを剥いだ瞬間、ティアナは息が止まりそうになった。
紅い瞳の、見知った顔。
その顔は、先日ティアナたちを襲ったあの男のものだった。
「……お前は」
アベルも気づいたのか、険しい顔で男を睨む。
しかし男は何食わぬ顔をし、固まったままのティアナに手を伸ばした。
ティアナははっとして手から逃れようとしたが、間に合わず捕らえられる。
「いや! 離して!」
「ティアナ!」
男の手の中で、ティアナは痛みで顔を歪める。
乱暴な扱いに、マルセルがどれだけ丁寧にティアナを扱ってくれていたかに気づき、じわりと涙がでてきた。
アベルが男につかみかかろうと動いたが、すぐに彼も黒マントの男たちに取り囲まれ、身動きがとれなくなった。
それでもなお抵抗しようとする2人に、男は面白くなさそうな顔をする。
「お前たちは何か、勘違いをしているようだが……」
そう言って、ティアナをテーブルの上にあっさりと降ろしたので、ティアナは驚いて男を見上げる。
そんなティアナの様子を愉快に思ったのか、彼の口はゆるやかに弧を描いた。