籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
「俺は助けに来たんだぞ」
その言葉に、ティアナもアベルも驚愕する。
「俺を誰かと勘違いしているんだろ? 残念ながら、俺はそいつじゃない」
「え……?」
言われてよく見れば、目の下のあたりにあるはずの蝶がない。
それに、考えてみれば登場の仕方も彼にしては派手すぎる。
あの男であればいつも気づかないうちにそばに現れているし、第一こんな大勢の人数を引き連れてはこない。
「それじゃ……あなたは一体誰なの?」
恐る恐るティアナが尋ねると、彼はふっと目を細める。
「俺はリオランドの王子、カイル」
「王子? 王子は王宮を追放されたはずだ」
「そうだ。だからここにいるんだ」
そう言うと、ティアナと目線をあわせるように床に膝をつき、手を差し出す。
「先ほどは失礼した。あなたはコレンタの姫であったな。改めて、あなたたちをある方のもとへお連れしたい」
差し出された手に戸惑っていると、カイルはそっとティアナの耳元で囁く。
「一緒に来ていただければ、話してあげよう。あの魔導士のことを」
「まどうし……」
その言葉にティアナは瞳を揺らす。
胸に浮かび上がるのは、最後に見たマルセルだ。
あの装束が魔導士の装束であることはティアナもわかっていた。
それにマルセルが髪留めをはずした瞬間に感じ取ったもの。
あれは……
「……」
ティアナはじっとカイルを見つめたあと、意を決し、彼の手をとった。