籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
マルセルの秘密
カイルに連れていかれた先は、なんとティアナの知っている場所だった。
たった数日前に訪れた、森の中の小さな小屋。
カイルがティアナたちを中へ招き入れると、アベルに気づいた子どもたちが歓声をあげて駆け寄ってきた。
中にはもちろん、ヘレンもいる。
「ほっほ。また会ったのぉ」
目をまるくするティアナに向かってにっと笑顔を浮かべるのは、リュイだった。
「リュイさん! 無事だったの!」
「運よく助けられたのじゃ。そこの若者にの」
リュイが杖で指し示す先には、壁に背中を預け、腕組みして立つカイルの姿があった。
「俺はずっとあいつを追いかけていたんだ。本当に運がよかったな、リュイ」
そう言って彼は口の端をあげた。
その姿はあのとき現れたフードの男そっくりで、ティアナはこっそり息を呑む。
「ねえ……カイルは本当に、わたしの知っているあの男とは別人なの?」
ティアナの質問に、カイルは不愉快そうに眉を寄せる。
「あれは父上だ。魔法で若い姿に変化しているんだ……そっくりで気味が悪いと一番感じているのはこの俺だよ」