籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
「それでも隠しきれずあふれてくるものは、何か別のものに混ぜ込んだり、移したりしていたようじゃ。あの夜は、外の草木に注いでおった」
リュイの言葉に、カイルがそういえば、と口を開く。
「母上に飲ませる薬に、魔法を織り込んでいたな。どんな病も和らぐ魔法薬。あれは奴しか作れないものだった」
そう言って彼は溜息をつき、額に手を当てる。
「優秀な魔導士で父上のお気に入りだった。何年か前に姿を消したが、指輪を奪って逃げたということは、やはりあいつは父上の命で動いてるんだろう」
「……」
次々と明るみになる真実に、ティアナは胸が苦しくなった。
(マルセルは――敵なの?)
それでも旅する中で見た笑顔に敵意は感じられなかった。
彼はいつだって穏やかな笑顔をティアナに向けてくれていたし、ときにはティアナを励ましてくれさえした。
(あれも演技だったのかしら。わたしを油断させるための……)