籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~


彼はティアナに殴り書きしたような字が並んでいる紙をひらひらと見せた。


「サファイアの少女を迎えに行かせていた者から連絡が入った。少女は何者かにさらわれたそうだ」


「えっ! パフィが?」


「ああ。今、その者の兄がこちらへ向かっているそうだ。話があるってさ」


パフィの兄がやってくると聞いて、アベルは肩を竦めた。


「あの仏頂面の兄上殿がやってくるのか。面倒なことになりそうだな」


「でもパフィが攫われるなんて。もしかしてマルセルが連れて行ってしまったの?」


パフィの胸にはまだサファイアがついたままだ。

アベルとは違い、まだ同調しきれていない彼女の体からサファイアを取り除けば死んでしまう可能性もあるため、攫うしかなかったのだろう。


カイルもおそらくそうだ、と頷いた。


「父上の仕業なら攫うなんてことはせずにサファイアを奪ってしまうだろうからな」


笑顔で言うカイルの言葉に、ティアナは背筋が凍った。


フードの男―――マクベスが先に彼女のもとへたどり着いていたら、パフィは今頃死んでいたかもしれない。


そう考えると、マルセルがパフィを攫っていってくれてよかったと思う。


ただしこちらが把握していた宝石も指輪も、すべて奪われてしまったけれど。


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