籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~


「王女殿とはいえ、妹を勝手に巻き込んだのはあなただ。任せてはおけない、私も同行する。……それまでは勝手に捜索させてもらう」


そう言い残して小屋を出ていくディオンに、カイルが部下に指示してあとを追わせる。


ディオンが出て行ったあと、ティアナはアベルの手の上で項垂れた。


「助けるなんていったけど……わたし一人ではマルセルの居場所もわからないのに」


「気にするな。お前がいなければパフィはマルセルと会うことも薬を飲むこともないまま死んでいたかもしれないんだ」


落ち込むティアナにアベルがそう言って励ましてくれる。


「でも、もとはと言えばわたしが……」


そう言いかけたところでマルセルの言葉を思い出す。

麦畑の納屋で、泣いていたティアナに言ってくれた言葉。



『君のその気持ちは、またあいつに利用されるかもしれない。ゆっくりでいい、向き合ってほしい』



あのときかけてくれた言葉が、ティアナの中でひっかかっていた。


あれはどういう意味なのだろうか。


向き合うとは、どう向き合えと言っているのだろうか。


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