籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
ティアナは首元に手をやり、目を閉じる。
そしてぐっとその手を握りしめたあと、心配そうな顔をしているアベルを見上げた。
「アベル……あなたはさっき、わたしたちから指輪を奪っていったのはマルセルの本心じゃないと言ってたわよね」
「ああ。俺はあいつを信じる。絶対、俺たちを裏切ったわけじゃない」
頷くアベルをじっと見つめる。
ティアナもそう感じていた。
マルセルはただ自分たちを裏切ったわけではないと。
もしそうだったらどれだけ救われることか。
マルセルに裏切られたと思いたくないだけの都合のいい夢なのかもしれない。
けれどもわずかばかりの希望が、ティアナの胸に火を灯す。
「わたしはパフィも、マルセルも助けるわ。絶対よ」
そのとき窓から白い鳩が部屋の中に滑りこんできて、カイルが差し出した手に羽ばたきながら止まった。
鳩の足には紙がくくりつけてあり、それを取って目を通したカイルは口笛を吹いた。
「決意も固めたところで、ちょうど情報が入ってきたよプリンセス。さすがにマルセルも女連れでは足を消せなかったらしい」
にっと笑いながら、紙をティアナに見せる。
「王宮だ」