籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
王宮のある一室へと向かう長い廊下をマルセルは歩く。
廊下の最奥にある大きな扉を開けると、静かにその中へと滑り込んだ。
天蓋付きの大きなベッドには、横たわる一人の女性。
人の気配に気づいたのか、女性はゆっくり目を開けた。
「マルセル……?」
「お久しぶりです、エリアル王妃」
マルセルが頭を下げると、エリアルは体を起こそうとした。
止めると、彼女はしぶしぶ横になったままマルセルを見る。
「本当に久しぶりね。何年になるかしら」
「3年……でしょうか」
「まあ。どうりで素敵になったこと」
そう言ったところでエリアルが咳き込み、マルセルは体を起こさせると用意していた薬を彼女に飲ませた。
おとなしく薬の入った器を受け取って飲むエリアルを、マルセルは見つめる。
3年前よりも確実に王妃はやせ衰えている。
髪の艶はなくなり頬はこけ、瞳には生気がない。
「……どうして戻ってきてしまったの」
器をマルセルに渡しながら、エリアルが呟くように言葉を零した。
どこか憂いを帯びたエリアルの表情に、マルセルは瞳を揺らす。