籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
「皆、父上が姿を変えていると思ってるんだ。今日ばかりは父上の趣味の悪さに感謝しなきゃね」
心なしか楽しそうにしているカイルに不安を覚えていると、ある部屋の前で彼は足を止めた。
「ここだ。魔導士の部屋」
「ここ……」
城の地下。
冷たい石畳の続く廊下に並んでいる部屋の一室。
ここにマルセルがいる……?
「会いたいとは思うけど、今見つかるとパフィを助けられないから我慢して。さてと……」
カイルは肩の上からティアナを床に降ろし、腕をまくった。
「さあ、囚われの姫を助けよう……本物の姫は君だが」
言いながらカイルがぷっと吹き出し、ティアナはむくれて彼を見上げる。
「どうして笑うのよ」
「いやなんでも。さあ、ここからは君の出番だよ。俺の見立てではパフィはこの隣の部屋にいるけど、あいつのことだからパフィのまわりにいろいろ仕掛けているだろう。小さい君ならそれを掻い潜れる」
カイルはそう言って壁の隙間にある小さな穴を指さした。
ティアナならなんとか入れそうなその穴を恐る恐る覗き込む。