籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
「どうして?」
「ここにお兄様がいるから。マルセルお兄様が」
はっきりそう告げる彼女に、ティアナは目を見開いた。
「マルセルのために……ここにいるの?」
「そうです。お兄様は昔、わたしとお母様を助けてくださいました。だから今度はわたしがお兄様の力になりたいの」
言いながら、パフィは寂しそうに眉を下げる。
「それなのに……お兄様は全くわたしと会ってくださらない。どうしてなのかわかりません」
しずくが落ちてきて顔を上げると、パフィは綺麗な目から涙をぽろぽろとこぼしていた。
「ねえパフィ……よかったら聞かせてもらえないかしら。あなたとマルセルのお話」
うつむくパフィの手にそっと触れると、パフィは頷いてティアナを手に抱いた。
そして指で涙を救い、ゆっくりと話し始める。
「……昔は仲良しだったの。家族で助け合って生きてた。でもある日突然、お兄様は姿を消して……お母様も3年前に病で亡くなりました」
パフィは手で口元を覆い、震える声を抑えるようにひとつ息をついてから、再び言葉を紡いでいく。
「嬉しかったの。もう会えないと思っていたお兄様に会えて。神様がわたしのお願いを聞いてくれたんだって思ったくらい」
「……」