籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
ティアナは何も言えずに、涙をこぼすパフィをただ見上げていた。
パフィが声を抑えて泣くのは、きっとティアナが兵士に見つからないようにするためではない。
隣の部屋にいるマルセルに、泣いていることを気づかれないためだ。
こんなに想われているのに、マルセルはどうしてパフィと顔を合わせないようにしているのだろう。
泣き続けるパフィに胸を痛めていると、部屋の外が騒がしくなった。
声の数は2つだが、そのどちらもティアナの知っている声だ。
「―――!」
大きな音がした直後、パフィのいる部屋の扉が勢いよく開かれる。
「マルセル!」
扉を開けたのはマルセルだった。
カイルはどうやら壁に打ち付けられたらしく、壁の前に崩れ落ちながら痛みに顔を歪めている。
マルセルはパフィの手の上にいるティアナを見つけると、怒ったような顔で部屋の中に入ってきた。
(マルセル……)
たとえその顔が自分に対して向けられているとしても、会いたかったマルセルの姿にティアナは心が締め付けられるのを感じた。
「……ティアナ。もう関わるなと言ったのにどうして来たんだ」
「関わらないわけないでしょ。わたしの国はまだ石のままなの!」
反論すると、マルセルはさっとティアナをパフィの手から取り上げる。
「待って! 待ってお兄様、その方は」
そのまま連れ去ろうとするマルセルを止めようとパフィがマルセルの腕をとらえたが、マルセルはそれを振り切って扉を閉めた。
それを見たティアナは頭に血がのぼる。