籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
「マルセル! どうしてパフィに冷たくするの!」
「君には関係ないことだ」
「関係なくないわ!」
マルセルはティアナが叫ぶのも無視して、ティアナを王宮の端にある塔の上の部屋へと運んだ。
何もない無機質な部屋の床には、何やら怪しげな模様が描かれている。
マルセルはその模様の上に立つと、ティアナを手の上に乗せ、さっきとは打って変わって穏やかな声を出した。
「君がここにいるということはアベルもいるね。さっきどこかで暴れていたのがそうかな」
「知らない」
ティアナはぷいと顔を背ける。
今更そんな優しい声を出したってマルセルの言いなりにはならないと示したかった。
しかしマルセルは気にすることなく膝をつき、模様に何かを書き足していく。
「待って! わかったわ」
このままでは有無を言わさず帰されると感じたティアナは、慌ててマルセルの手を止め、彼を見つめた。
「最後に聞きたいことがあるの。それを聞いたらわたし、おとなしく帰るわ」
「本当に?」
「本当よ。納得できたらね。あと、言いたいこともあるわ」
マルセルはいまいち信用ならないという顔をしているが、じっと見つめてくるティアナに諦めたように息をつく。