籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
「わかった。そう言われて無理矢理帰すのは気が進まないからね。何が聞きたい?」
マルセルの反応にティアナは胸を撫で下ろした。
やはりマルセルはティアナたちを裏切っても、優しいマルセルのままだ。
マルセルがティアナの話を聞いてくれずに、無慈悲にこのまま帰されたらどうしようかと思った。
マルセルはティアナを連れて小窓のところまで歩き、窓辺にそっとティアナを降ろした。
そこに立つと、ちょうどマルセルとティアナは目線が同じ位置になる。
いつもとは違う角度から見るマルセルになんだか恥ずかしくなって、ティアナはさっと目をそらした。
「あのね、今から聞くことはわたしだけが聞きたいことじゃないわ。アベルも聞きたいと思ってるはずよ」
そう言っただけで、マルセルは大体のことを察したらしい。
彼は一瞬瞳を揺らしたが、すぐに眉を下げて微笑んだ。
「どうして魔導士だってこと、隠してたか?」
「……うん」
頷くと、マルセルは遠い目をして夜空を見上げた。
そして口を開く。
「メアリーを覚えてる?」