籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
「メアリー? あの、最初にあなたの薬屋で会ったひどい女の子?」
ココア色の髪を2つに結んだ、緑色のワンピースの女の子だ。
メアリーがマルセルのことを王国に通報したせいで、ティアナは少々やっかいな目にあった。
彼女のことを思い出して苦い顔をするティアナにくすりと笑ってから、マルセルはティアナの隣に肘をつき、夜空に視線を戻す。
「僕はあの子と同じようなことをした。大切な家族を助けるつもりで、してはいけないことをしてしまったんだ」
「……」
ティアナは黙ってマルセルを見つめた。
遠くを眺めて昔を思い出すマルセルの瞳は穏やかに夜空の星を映している。
そんなマルセルの横顔を見つめながら、ティアナはごくりと喉を鳴らした。
これからマルセルは、ティアナに彼の過去を話してくれる。
今まで知ることができなかった彼の秘密を。
「10歳のとき」
マルセルが口を開く。
「僕は母と妹と3人で暮らしていた。母はずっと病気がちで、生活は苦しかった」
聞きながら、先ほどのパフィの話を思い出す。彼女も同じようなことを言っていた。
「そんな時、マクベス王が現れた。彼は僕が魔法を使えると見抜いたらしい。それまでは僕も知らなくて……王宮へ行けば家族を援助すると言われて、僕は王宮へ行き、魔導士になった」