籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
「それで……魔導士に」
マルセルは頷き、自嘲するように笑った。
「でも援助なんて最初の数年だけだったんだと、母が死んでから気づいた。僕は王宮から抜け出し、もうあいつの言いなりにはならないと誓った。二度と魔法は使わないと」
「そうだったの……」
ティアナはうつむいた。
マルセルが魔導士となった背景に、そんなことがあったなんて。
マルセルは多くは語らなかったけれど、悩み、辛い思いをしてきたのだろう。
パフィに対する彼の態度がそれを物語っているような気がした。
マルセルはきっと責任を感じているのだ。
自分が王宮へ行かなければ母親も死なずにすんだかもしれない、パフィを悲しませずにすんだかもしれないと。
黙って2人で夜空を見上げる。
目の前に広がるのはたくさんの星。
もし星が願いを叶えてくれるのなら、今すぐもとの姿に戻ってマルセルを抱きしめたいと思った。
マルセルがふいにティアナに向き直る。
彼はティアナを見つめて何か迷うように瞳を揺らしたが、意を決して口を開いた。
「ティアナ、君に言わなければいけないことがある」
ティアナはマルセルをきょとんと見上げる。