籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
ティアナの様子に茫然としていたマルセルは急いで懐から指輪を取り出し、ティアナの手をとり指に嵌める。
指輪がティアナの指に納まると、輝きは静まった。
ただ体を駆け巡った熱だけが、陽だまりのような温かさで胸の奥にとどまっている。
「何が起こったの?」
そっと目を開けると、目の前には微笑むマルセルの姿。
そして視界の違和感。
首を傾げて自分の体を見下ろし、ティアナは驚きに息が止まりそうになった。
ティアナの小さかった体はもとの大きさに戻っており、自分の足でしっかり床の上に立っている。
「ティアナ……おめでとう」
信じられない思いで自分の手をまじまじと見ているティアナに、マルセルが言う。
「指輪の呪いが解けたの?」
「いや、僕が指輪にかけたのは石化と移動の魔法だけ……最後に少しいじったけど」
「じゃあどうして? 小さくなったのは指輪のせいだと思っていたのに」
兵士たちの叫ぶ声がし、2人ははっとして窓の外を覗き込んだ。
槍を持った兵士たちに囲まれているアベルとディオンの姿が見え、ティアナは青ざめる。