籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
ティアナは狼狽えて指輪のサファイアを抜こうとし、マルセルに止められてもどうしたらいいかわからなくてもがき続けた。
「ティアナ落ち着いて」
取り乱すあまりに再び胸の奥が熱くなっていることにも気づかないままもがいていると、突然指輪が光り出し、ティアナは驚いて動きを止め、食い入るように指輪を見つめた。
その隙にマルセルがティアナの両手を捕らえ、サファイアを抜くことができないように抑え込んだ。
「……」
顔を上げると、冷静なマルセルの瞳と目があった。
「落ち着いて。取り乱すと指輪が反応してしまう」
「……ごめんなさい。だけどパフィが」
「大丈夫、眠っているだけ。ちゃんとサファイアと順応できていたみたいだ」
「そうなの……よかった」
ディオンの腕の中で穏やかに目を閉じているパフィが眠っているのだと知り、ティアナはほっと胸を撫で下ろした。
そして再び指輪に視線を落とす。
「でも、宝石が自分で戻ってくるだなんて」
指輪には、三種類の宝石が揃っている。
ピンクダイヤ、アメジスト、サファイア……残るはルビーだけだ。
「もとはその指輪が宝石たちが納まるべき器だから、引き寄せられるんだ。アメジストが指輪の力を強めていたのかもしれない」
ティアナが落ち着きを取り戻したのを確認すると、マルセルはティアナから体を離す。
「先を急ごう、今の騒ぎで気づかれたみたいだ」
「俺たちは後から行こう。先に行ってくれ」
アベルが眠ってしまってるパフィをちらりと見て言った。
マルセルもパフィに目をやり、それから彼女を抱きかかえているディオンと目を合わせる。
「パフィを頼みます」
ディオンが頷くと、ティアナの手を取って地下牢を駆け抜けた。