籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
危ないものではないと感じた。
幼い頃を思い出すような、柔らかくて懐かしい響きだった。
ひたすら走り、ある部屋の前で足を止めた。
長い廊下の最奥の、蝶の模様が彫られた大きな扉で閉じられた部屋。
「ここは……」
追いついたマルセルが呟き、黙り込んだ。
彼が制してこないということは開けてもいいということなのだろう。
ティアナは扉に手をかけ、そっと開いた。
部屋の中に入ると、広い部屋の中に天蓋付きのベッドがあった。
ティアナが入ってきたことに気づいたのか、そこに横たわっていた女性がゆっくりと体を起こす。
そして微笑んだ。
「久しぶりね、ティアナ姫」
「……エリアル?」
マルセルを振り返ると、彼は黙って頷いた。
エリアルは手招きをしてティアナをベッドの傍へ誘うと、ティアナの手に触れた。
ティアナは彼女の手の冷たさにはっと息を飲んだが、エリアルは気にせず口を開く。