籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
「世界は時を止め、永遠に動かなくなる」
そう言って微笑むマクベスがどこか悲しそうに見え、ティアナは一瞬彼を助けたいと思った。
しかし慌てて頭を振ってその考えを吹き飛ばし、もう一度彼を見据える。
「そんなことがどうやってできるっていうの」
ティアナの問いに、マクベスはティアナの指に嵌められた指輪を指し示す。
「その指輪を使って鐘を鳴らせ。それには石化の呪がかかっている」
「……!」
鐘の音に乗せて呪いを国中に運ぶつもりなのだ。
もとは国を守るための鐘の音色を利用するなんて。
ぎゅっと爪が食い込むほど手を握りしめていると、マクベスが瞬時にすぐ目の前に現れて小さく悲鳴を上げた。
咄嗟にかばおうとしたマルセルの襟を片手で掴み上げ、マルセルの足が宙に浮く。
「マルセルを離して……!」
そうしている間にもマルセルの腕からは血が滴り、ティアナは悲鳴のような声をあげてマクベスに抗議した。
「俺に協力しろ、でなければお前の大切なものを壊す」
マクベスはそう言いながら近くにあった石化したままの薔薇を一輪手折り、その尖った茎の先をマルセルの首に突きつける。
ティアナは焦りながらも首を横に振った。