籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
「できない! 何のためにそんなことを」
「エリアルのためだ」
彼の口から出たエリアルの名に、ティアナははっと目を見開く。
エリアルのため……?
「これはエリアルの鳴らす鐘にのうのうと守られていた国民、そしてエリアルが倒れるまで無理をしていることに気づかなかった、俺の咎だよ」
そう言って薔薇を大きく振りかざす。
「やめて!」
尖った薔薇の先端がマルセルの首に危うく届くところで、マクベスが呻きながらよろめき、ティアナは目を見張る。
マルセルが彼の腹部を蹴ったのだ。その隙をついて逃れたマルセルをティアナは受け止める。
「ティアナ」
マルセルがティアナの指輪に触れ、ティアナは頷いた。
マクベスの気持ちに、ようやく気付いた。
彼が時を止めたいと思う理由。
そしてエリアルの願い。
ティアナは指輪に触れながら、腹部を押さえて2人を睨みつけるマクベスに向き直る。
「どんなものだっていつか朽ち果てるのよ。それに石になったら、愛しい気持ちもなくなってしまうわ」
「……」
「エリアルは言っていたわ。あなたに救われたんだって」
「俺に……救われた?」