籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
マルセルはそう言って目を伏せ、ティアナは黙ってマルセルを見上げる。
そしてマクベスは剣を地面に突き立て、あの日ティアナと初めて対面したときのように風とともに姿を消した。
「……マクベス王は哀れな人だった。大切な人を助けたいともがく彼に、おかしな方法だとわかっていても手を貸してあげたくなっていたんだ」
マクベスが去っていった場所を見つめながら、マルセルが呟くように言葉を零した。
風が通り抜けていく。
そのまま風に溶けてしまいそうに見えて、ティアナは思わずマルセルの服の袖を掴んだ。
「あなたもちゃんと守れてるわ」
笑顔を向けるティアナに、マルセルが目を向ける。
マルセルと目が合って、ティアナは慌てて手を離し、エリアルの想いの欠片で一面白く染まった景色を見渡す。
「さあ、国をもとに戻さなくちゃ」
マクベスは指輪に願えばもとに戻ると言っていた。
「手伝おうか」
「ありがとう、でも大丈夫。わたしの手で戻したいから」
ティアナは指輪に視線を落とす。
この指輪と出会ってから、本当に色々あった。
悲しいことも、うれしいことも。
小さな宝石が4つ、ティアナに微笑みかけるかのように煌いた。