籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
「ありがとう」
呟き、そっと、口づける。
その瞬間、指輪から眩い光が噴水のように溢れ出し、瞬く間に国中に広がっていた。
白い世界に、徐々に色が戻っていく。
花は黄やピンクに染まり、木々は鮮やかな緑の葉を風に揺らす。
そして明るい小鳥の囀りが耳に届くと、ティアナの目からはらはらと涙がこぼれ落ちた。
「……!」
涙が指輪に落ちると、指輪は粉々に砕け散った。
まるでティアナの涙を見届けるかのように。
「……」
ティアナは指輪を失った手元を見つめながら、涙を流し続けた。
そんなティアナの肩をマルセルが抱く。
するとすぐ近くで、小さな悲鳴が聞こえて顔をあげた。
「きゃっ!? ティアナ様、その方は……?」
「ラナ!」
もとに戻ったラナが、おろおろしながらマルセルとティアナを交互に見ている。
それもそうだ、彼女にしてみればいつの間にか見知らぬ男性が庭園に入り込んできているのだから。
「すぐに人を……! ジル殿下を……!」
「ちょっと待って! 違うの、この人は……!」
青ざめながら駆けていくラナを止めることができず、ティアナは慌てふためく。