籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~


庭園の端、背の低い木々で囲われた一角にある、野花がひっそりと咲く小さな花畑。


庭園の中を知り尽くしているティアナにしかわからないその場所で、ティアナはむしゃくしゃしながら座りこんでいた。


「お父様ったら何を考えているの? わたしを称えるとか言って、本当は嫌がらせしてるだけなんじゃないの!?」


初めてティアナがお披露目されるという噂を聞きつけてやってきた男たちに追い回されて、もうへとへとだ。


ラナの手によって飾り立てられたドレスに、華奢で高いヒール。


「わたしにはこんなの、いらないんだから!」


黄色い薔薇の髪飾りを引き抜いて投げ捨てると、すっと背後から誰かの手が伸びてきてそれを拾い上げた。

ティアナが驚いて顔を上げると、拾い主は優しく微笑む。


「今日のパーティーの主役が、こんなところで何してるの?」


「マルセル!」


そこにいるのがマルセルだと認識したティアナは勢いよく立ち上がる。


「どうしてここにいるの? まさか無断で」


またラナとジルが不審者扱いして追い回すのではと思い、慌ててあたりを見回すと、マルセルはおかしそうに笑いながら拾った髪飾りの汚れを落とし、ティアナの髪につける。



< 157 / 161 >

この作品をシェア

pagetop