籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
「ラナ……!」
急いでラナに駆け寄り、彼女の手を取ろうとする。
動かなくなった少女の手は、石のように固かった。
石のよう、ではない。
彼女の服も髪も、そして体も、全てが石と化していた。
空を飛んでいた小鳥も地に落ち、花は風に揺らいだ姿のまま固まっている。
何もかもが石となり、動きを止め、時間を止めていた。
ティアナは体を震わせながら二、三歩後ずさると、すぐに薔薇のアーチのほうへと駆けだした。
アーチも番兵も、石と化している。
「嘘よ、嘘よ!」
ティアナは髪を振り乱して、城内に駆け込んだ。
しかしティアナの期待に反し、現実が次々と目に飛び込んでくる。
久々に足を踏み入れた城内の、何もかもが石となっていた。
玉座の父も、母も、そしてジルも。
あの一瞬で、全てが灰色に染まったのだ。
ただ一人、ティアナだけを残して。
ティアナの足から力が抜け、床に膝をつく。
ティアナは涙を流し、現実から逃れようとするように頭を抱え、目を強く閉じた。
「嘘よ……こんなの」
膝に伝わる冷たく硬い石の感触が、ますますティアナを追い詰める。
「いや……いや、いやあーっ!!」
ティアナの悲鳴に反応するかのように、指輪の宝石が再び眩い光を放ち、彼女をすっかり包み込んだ。
しかしそれもまた一瞬のこと。
光が静まったその場所に、ティアナの姿はあとかたもなかった。