籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
マルセルは混乱しながらもひとまず家の中に戻ると、消化液まみれの彼女の体をガーゼで拭いてやり、カモミールの葉を重ねて作った小さなベッドの上に横たわらせた。
そして自分も椅子に腰かけ、ようやく落ち着いて少女を見た。
薄汚れてしまってはいるが、質の良さそうなクリーム色のドレス。
腰まで伸びる、燃えるような赤い髪。
そして何よりマルセルの目を引いたのは、少女の細い首には似合わない、首輪のような、首飾りのような、なんとも区別しがたい金色のリングだった。
リングにはめ込まれたピンク色に輝く宝石を、マルセルはじっと見つめた。
「これは……」
マルセルの声に反応するように、一瞬、宝石が煌めいた。
「うーん」
少女が身じろぎをして、マルセルは彼女の顔を覗き込んだ。
だがそれは間違いだったようで、目を開いた瞬間にマルセルの顔が視界に入った少女は、悲鳴をあげて飛び起きた。
「ごめん、驚かせてしまったね」
「あなた誰?」
少女は蒼い瞳をめいっぱい開いて、マルセルを見上げている。
「僕はマルセル。ここで薬屋を営んでいるんだ」
「薬屋?」
少女は驚いたように目を見開き、きょろきょろとまわりを見回した。