籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
「どうしてこんなところに! わたしはお城にいたはずなのに」
そこで初めて自分の体の大きさを自覚し、少女は再び甲高い悲鳴をあげた。
マルセルは取り乱す少女の肩に、ハンカチをそっとかけてやりながら落ち着くように言い聞かせる。
少女は小さな体を隠すようにハンカチを掻き合わせると、少し落ち着いたようだ。
マルセルはほっとしながら、なるべく刺激しないように柔らかな声を出す。
「君は、誰? どこから来たの?」
唇を震わせてから、少女は消えそうなか細い声で答えた。
「……わたしはコレンタの王女ティアナ。どうしてここに来たのかは、わからない……」
ティアナは気持ちを落ち着かせるように、寝ていたせいで乱れた髪を、細い指で整え始めた。
燃えるような赤い髪は色白の肌を際立たせ、くりっとした蒼い瞳は小さな宝石のようだ。
マルセルが口を開きかけたとき、ベルが鳴って来客を知らせた。
「薬屋さーん」
メアリーの声だ。
マルセルは小声でティアナにじっとしているように告げて立ち上がると、中に入ってきたメアリーの側へ向かった。
「どうかしたの?」
「落し物しちゃったの。鏡なんだけどぉ、見てない?」
「見てないな。本当にここに落とした?」
「うーん、わからないけど」
メアリーは腰をかがめて机の下を覗き込もうとして、机の上にいるティアナを見つけてきょとんとした。