籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
「薬屋さん、これなあに?」
「お人形だよ。ああ、触らないで。とっても壊れやすいから」
人形のふりをするティアナに手を伸ばしかけたメアリーを制し、ティアナをメアリーの届かない場所へと移した。
メアリーは興味津々にティアナを見つめている。
これはいろいろ聞かれる前に、早くメアリーを追い出さなければ。
マルセルは引き出しを開けて小さな手鏡を取り出し、メアリーに渡した。
「鏡を失くしたんなら、これをあげる」
メアリーは鏡を受け取ると、途端ににやにやしながらマルセルを見上げた。
「これ、アリアさんが持ってた! もしかしてアリアさんとも関係があったの?」
「よけいな詮索はしなくていいから」
メアリーの背中を押して、店の外へと追い出す。
背中を押されながらも、メアリーはマルセルを仰ぎ見た。
「そういえば、さっきくれたお薬、すごく効いたの! ママがあんなに家中を歩いてるのは久しぶり!」
「特別な薬だからね。君のママが元気になってよかったよ」
メアリーは頷いて、鏡を握りしめた。
「薬屋さんのお薬は、本当によく効くね……まるで、魔法みたいに」
メアリーがもう一度お礼を言って店を出て行くと、ティアナが大きく息を吸った。