籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
「ああ、びっくりしたわ。小さい女の子になんか見つかったら、おもちゃにされちゃうとこだった!」
小さな来訪者のお陰で、彼女は少し元気を取り戻したようだ。
その証拠に、マルセルの顔を見て照れくさそうに肩を竦めた。
「さっきは取り乱してごめんなさい。いろいろ混乱してたの……」
マルセルは頷き、ティアナに微笑みかけた。
「もう店は閉めるし、二階に移動しようか。話が聞きたいしね」
マルセルはドアにかけてあるプレートをひっくり返して鍵をかけ、カモミールの葉ごとティアナを両手で包むと二階へと運んだ。
階段を上ってすぐの部屋の中に入り、窓際のテーブルの上に置いてやると、ティアナがもそもそとカモミールの中から這い出てきた。
きょろきょろと部屋中を見回してから、マルセルを見上げる。
「ちょっと見て回っても平気?」
「どうぞ」
ポットを簡易コンロにかけながらマルセルが笑うと、ティアナはぱっと顔を輝かせ、すぐに探検を開始した。
置いてあった本を開いて見たり、時計の針をくるくるまわしたりして楽しんでいる。
マルセルは棚から2つティーカップを取り出し、ハーブティーを注ぎいれた。
部屋中にハーブの清々しい香りが広がる。
物珍しそうに筆入れを見ていたティアナが、香りにつられて近づいてきた。