籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
「わたし、宝石を探しに行くわ」
寝込んでいるアベルを見て、ティアナはどうしようもなく心が痛む。
「他にアベルみたいな犠牲者がいるはずよ。わたしのせいで誰かが死ぬなんて、嫌なの」
マルセルは黙ったまま、アベルの額にはりついた前髪を指先で払った。
「それに指輪が元通りになれば、わたしももとの大きさに戻って、国の人たちを何とかする方法を見つけられるかもしれないし」
「……だめだよティアナ。小さな君がこの国の人に見つかったら、確実に捕まえられてしまう」
黙っていたマルセルがようやく口を開き、ティアナに反対した。
「この国は今、とても不安定なんだ。少しでもおかしくなったり不思議な力を持ったりした人間は、王のもとへ連れて行かれたまま帰ってこない。大人しくしていれば何の危害もない」
ティアナはむっとしてマルセルを睨みつける。
「あなたはそれでいいの? 何の罪もない人たちが、くだらない理由で捕まるのを、黙ってみてるつもりなの?」
「いつかこの風潮も消えるだろう。時代の流れとともに」
「そんなの逃げてるだけよ!」
ティアナがかっとして立ち上がったとき、階下で大きな物音がした。
薬屋の扉が壊されたようだ。
驚いているうちに何人もの足音が階段を上ってきて、あっというまに部屋の扉を荒々しく蹴破り中に入ってきた。