籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
入ってきたのは手に手に槍を構えた、この国の兵士だった。
それに気づいたマルセルはティアナをすばやく自分の胸ポケットへと隠し、少し緊張した面持ちで椅子から立ち上がった。
「……今日はお客が多いな」
動いたマルセルに、兵士達はすかさず槍を突き付ける。
「マルセルだな。お前を捕らえる」
兵士の言葉に、マルセルの眉がぴくりと動いた。
「一体どういうことでしょう」
「お前が怪しげな術を使うと、この娘から報告があった。王宮まで来てもらおう」
マルセルの様子を鼻で笑ってから、兵士は自分の背後に腕を伸ばす。
兵士の影から引っ張り出されたのは、小さな女の子だった。
瞳が不安げに揺れている。
ただ、その女の子はマルセルがよく知っている子であった。
「メアリー?」
「ごめんね、薬屋さん……」
メアリーは今にも泣きそうな顔で、マルセルを見つめている。
「……」
マルセルはメアリーの様子に、少し寂しそうな笑みを浮かべ、それからポケットのティアナに囁きかけた。
「ティアナ。アベルを連れて逃げろ」
「どうやれっていうのよ」
ポケットの隙間からティアナがわずかに顔を出し、眉を寄せる。
「君は魔法が使えるんじゃないの?」
「使えないもの」
「……」