籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
マルセルが閉口すると同時に、兵士が強く彼の腕を捕らえて引き寄せた。
その強い衝撃にティアナが小さく悲鳴をあげたかと思うと、突然ティアナが入っているポケットから光が溢れ、部屋中を白く染め上げた。
「な、なんだ!?」
光の中から兵士達の慌てふためく声が聞こえる。
目の眩む中、マルセルは自分の体が宙に浮かぶのを感じた。
そして一瞬強い眩暈が襲い、気づいたときには何もない丘の上にいた。
兵士達の姿も、喧騒もない。
ただ静かな夜の薄闇に包まれた丘の上で、マルセルは茫然と街を見下ろした。
空には星が瞬いている。
「一体何が起こったの?」
ポケットから這い出てきたティアナも、今はマルセルの肩の上で一緒に茫然と街を見ている。
後ろをちらりと確認すると、アベルが草の上に横たわっているのが見えた。
ちゃんとアベルも運ばれてきているようだ。
マルセルはほっと息をつき、ティアナに視線を戻すと、彼女は指輪を手にとって見つめていた。
指輪の宝石がまだわずかに光を帯びていて、さきほどの出来事が指輪のせいだということを物語っている。
「また、指輪がわたしを移動させたわ。あのときもこんな風に光って、気づいたらマルセルのところにいたの」
「僕には、指輪が君を守ったように思えるよ」
「……そうなのかしら」
ティアナは眉を寄せて指輪を眺めていたが、やがて肩を竦めてそれを首にかけると、「それにしても!」と声をあげてマルセルを見上げた。