籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
「あの子、ひどいわね! せっかくマルセルがお薬をあげたのに」
「……メアリーを責めてはいけないよ。あの子の気持ちはよくわかる」
ティアナの剣幕にマルセルは自嘲気味に笑い、草の上に腰を下ろした。
そしてそのまま夜空を見上げれば、たくさんの輝く星が目に飛び込んできた。
まるで漆黒のドレスに散りばめられたダイヤモンドのよう。
しばらく星空を見ていなかったから、この国の空がこんなに美しかったことなど忘れていた。
マルセルはしばらく夜空を眺めていたが、やがて視線を落とし、マルセルにつられて夜空を見上げていたティアナを手の上に誘って面と向き合った。
不思議そうにマルセルを見ている彼女の首で、指輪が月の光に煌めいた。
「君は本当に、宝石を探しに行くの?」
ティアナは頷いた。
「ええ……」
「僕も一緒に行こう」
マルセルの言葉にティアナは目を見開き、戸惑いがちに「いいの?」とマルセルを見上げた。
「君にもわかっただろ。怪しげな者を通報すれば金一封。さっきまでは嫌疑程度だったろうけど、今ので完全にマークされた。つまり、もう僕は平穏には過ごせない」
そしてアベルをちらりと見て、その腕に嵌っているアメジストを確認する。
「どうせ逃げ回るなら、宝石探しをしたっていい。第一肝心の宝石のひとつはアベルの腕にはまってるし、それに君のそばにいれば……」