籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
ティアナはきょとんと目を瞬かせ、マルセルは微笑みかける。
「その指輪が兵士達から逃がしてくれそうだし」
「なんて浅ましいの!」
呆れかえったティアナが手の上から飛び降りたところで、アベルが小さな呻き声を漏らした。
ティアナはアベルのほうへ走っていこうとしたが、小さな彼女が走ったところで進む距離はたかが知れている。
マルセルはティアナを簡単に捕まえて肩に乗せると、そのままアベルの側に行って膝をついた。
そして「ただの寝言みたいだ」と言って、ティアナに笑みを向ける。
「ほら、この方が速く移動できる。僕がいたほうがいいだろ?」
ティアナは不機嫌そうに頬をふくらませ、そっぽを向いた。
「そんなの、アベルが目を覚ましたら乗せて貰えばいいことよ」
「そのアベルの具合が宝石のせいでまた悪くなったら、どうするのかな」
「……」
ティアナが顔をひきつらせたところを、すかさず彼女の小さな手をとった。
「よろしく。小さなたんぽぽさん」
ティアナはどういう表情をしたらいいのか迷うように視線を泳がせた挙句、黙ってこくりと頷いた。
指輪のダイヤモンドがかすかに煌めく。
こうして、三人の宝石探しの旅が幕を開けたのであった。