籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
マルセルとアベルのやりとりを尻目に、ティアナはカーテンをよじ登って窓枠にたどり着き、窓の外を覗いてみた。
外の通りには人通りが少なく、歩く人々もどこか元気がない。誰も彼も頭を垂れて地面ばかりを見つめて歩いている。
ティアナは眉を寄せて、通りを横切る痩せ細った猫を目で追う。
「わたし、お城から出たことなかったから知らなかったんだけど、街というのはあまりいいところじゃないわね」
ここに来るまでの間に、道で物乞いをする人や、スリや盗みを働く人々の姿を見た。
マルセルたちは咎める風でもなく、ただ苦い顔をして彼らを見ていた。
皆貧しい恰好をして、暗い顔で街をうろついていた。
よく見るとマルセルとアベルの着ているものも、あまりいいものではない。
ティアナの深刻そうな顔を見て取ったマルセルが、ふっと笑いかける。
「この国は今不安定でね。ティアナの国の街は、もっといいところだと思うよ」
「そうなの……」
マルセルに続くように、アベルが針を動かしながら付け加える。