籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
「猫は見つけたら外に放り出しておきますから、おとなしく――」
女性がふらりとよろめき、マルセルがすかさず腕をまわして支える。
マルセルの腕の中で、女性はぐったりとしている。
彼女の手から滑り落ちた酒瓶が、鈍い音をたてて床を転がっていった。
「具合が悪いの? もしかして、宝石?」
「いや――違う。ただ気を失ってるだけみたいだ」
念のためにティアナの指輪を確認してみたが、光を放つ様子はない。
「宝石のせいじゃないみたいね」
ほっとしたような、がっかりしたような。
「強がってたけど、本当は怖かったのね。だめじゃない、マルセル。こんなに怯えさせるなんて紳士失格だわ」
他に誰も駆けつけてこなかったところをみると、この屋敷には彼女以外いなかったのだろう。
マルセルは女性を抱えると、部屋にあったベッドに運んでそっと横たわらせた。
改めて彼女を見ると、まつ毛が人形のように長い、可愛らしい容貌の女性だった。
艶やかな黒い髪は、ガーベラの花を模した髪飾りでサイドに束ねてある。
ティアナが胸ポケットから抜け出ると、気づいたマルセルが手の上に乗せて彼女のほうへ近づけてくれた。