籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
そのとき、女性が小さく声を漏らし、瞼がぴくりと動く。
しまったと思ったときにはもう遅く、ティアナは目覚めた彼女と真正面から目があってしまった。
彼女はぼんやりとティアナを見ていたが、やがて目を見開き、顔を引きつらせた。
「な、な……」
「目が覚めたみたいですね」
口をぱくぱくと動かす彼女に、マルセルが優しく声をかけると、ますます青ざめた。
「あなたは……! それに、この子、小さい……」
見つかったものは仕方がない、これ以上怪しいものだと騒がれないように、ティアナはにっこりと微笑みかけた。
「初めまして、わたしはティアナ。どういうわけか小さくなっちゃったけど、これでもちゃんとした人間よ。こっちはマルセル。運動音痴な薬屋なの」
「ええっと」
女性は戸惑いをあらわに目を泳がせている。
無理もないだろう。
ティアナだって、もし自分が突然現れた怪しく若い男と手のひらサイズの少女に挨拶をされたとしたら、どう反応したらいいかわからない。
それでも少しでも女性を落ち着かせようと、ティアナはゆっくりと彼女に語りかける。
「安心して。わたしたちは盗みに入ったわけでも、あなたをどうこうしようと思っているわけでもないから」
「……」