籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
マルセルときたら。
また、あることないこと、どうしてあんなにすらすらと言葉が出てくるのだろうかと、ティアナは内心あきれていた。
彼の言葉は信用ならないわ、と自分の胸に刻み付けておく。
リゼットもリゼットだ。
いくら優しい声をしていても、こんな見るからに胡散臭い男の言うことをあっさり信じてしまうだなんて、どうやら彼女は少しぼんやりした性格のようだ。
そのお陰でこちらは助かったのだけれど。
「わたしも、今回のことは納得いきません。魔法が使えるというだけで連れて行かれるなんて! まわりの人たちは『国のため』だと言って助けてくれませんし、反抗しようとすれば同じように連れて行かれますし」
リゼットはティアナたちを同じ境遇の仲間とみて心を許したのか、饒舌に話し出した。
「わたしは家族の中で唯一魔法も使えませんし、嫁いでいましたから連れていかれることはありませんでしたが……今日はただ、荒らされた屋敷の様子を見に来たんです」
溜まった怒りを吐き出すように一気にまくしたてたあと、連れ去られた家族のことを思い出したのか、リゼットは表情を暗くした。