籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~


「ご家族といえば、ここは王妃様の生家だとさっき街の人に聞きました」


「それは姉です。姉は20年前に王宮へあがりました。特別な力を持っていたらしくて……それが何だかわたしにはよくわからないけど。でもまさか、国王の妃になるだなんて」


王妃を姉だというリゼットの顔を、ティアナはまじまじと見つめた。


王妃の妹。

つまり、エリアルの妹だということだ。


黒い髪や瑞々しい赤の唇に、エリアルの面影がある。


マルセルはリゼットを見つめるティアナをちらりと見てから、口を開く。


「始めから妃になる予定ではなかったんですか?」


「まさか。王宮にあがった頃、姉はまだ十にも満たない子どもでしたもの。そこにそのころの姉の絵があるの……とっていただいて、よろしいかしら」


リゼットの指さす先に、壁にかけられた小さな人物画があった。

マルセルがそっと壁から外し、リゼットのベッドに運んだ。


ティアナはリゼットの腕によじ登り、絵を覗き込み、はっと息をのんだ。


「エリアル……」


丁寧に額縁に入れられたそれには、とても美しい、幼い少女の姿が描かれていた。

艶やかな黒い髪、淡い菫の瞳、みずみずしい桃色の頬。

ティアナがあの日見た王妃の若き姿。


ただ、絵の中の彼女は無表情で、幸せそうなほほ笑みを浮かべてはいない。


リゼットは愛おしそうに絵に指を滑らせる。


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