籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
「噛まれたのは初めてだよ」
ティアナに噛みつかれた指をさすりながら、マルセルはくすくす笑っている。
「だって他にどうやってあの状態のあなたを動かせばいいの? あなたは馬よ。わたしの馬なの」
「ひどいことを言うのも君だけだね」
『女性は、そんなことはしないものです!』
ふとラナのことを思い出した。
いつも口うるさく行儀についてティアナを叱りつけていた彼女は、今は石になったまま、遠く離れたコレンタの城にいる。
「……連れていかれたエリアルの家族といい、この国にも魔法を使える人がいるのね」
「コレンタほどではないけどね。まれにそういった力を持つ人が生まれる」
「それなのに、どうしてコレンタの宝石がないの? わたしの国では、みんな宝石を使っていたのに」
「コレンタ産の宝石は王宮でしか扱っていないよ。この国は魔力がない人間の方が多くて危険だからね」
「ふぅん……」