籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
いつの間にか夜の闇が辺りを包み、ひんやりとした空気が肌を滑る。
街は昼見たときよりも更に暗く、人通りもない。
なんだか街全体が嫌な感じがし、マルセルの肩の上で、少しだけ体を震わせた。
それに気づいたマルセルがそっとポケットに運んでくれ、ティアナはほっと息をつく。
ティアナはマルセルのポケットの中が好きだった。
布越しに伝わってくるマルセルの体温が体を包みこんでくれ、ティアナは一人ではないと感じることができるから。
宿に戻ると、部屋は明かりが点いていなかった。
マルセルがランプに火を灯すと、アベルがベッドの上で魘されていた。
マルセルは急いでアベルの額に手を当て、眉を寄せる。
「また熱が出てる」
マルセルは手際よく薬を煎じ、それをアベルに飲ませた。
「今ので作り置きしておいたやつが切れた。新しく作らないと……」
そう言いながら、彼は外套を着こむ。
「どこへ行くの?」
「少し外に出てくる。ティアナ、アベルの様子をよろしく頼む」
「ちょっと……マルセル!」