籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
マルセルは一人で夜の闇の中に飛び出していき、追いかけることのできないティアナはアベルとともにランプの明かりだけが灯る、薄暗い部屋の中に残された。
心細さがティアナを襲ったが、アベルは相変わらず苦しそうに呼吸をしている。
アベルを助けてあげることができるのは今、自分しかいない。
ティアナは気を引き締めるために両手で頬を打ち、弱気な気持ちを奮い立たせると、アベルの看病に取り掛かった。
小さな体でアベルの体をよじ登ったり下りたりしながら、汗を拭いてやったり、額の布を取り換えたりしているうちに、アベルの呼吸はだいぶ落ち着いてきた。
穏やかに寝入る彼の様子に安堵しながら、ティアナは窓辺に足を運ぶ。
カーテンを少しだけ開けて、ティアナはぼんやりと夜空を見上げた。
夜空にはまるい月が高く輝き、月明かりで街を照らしている。
こんなに月が美しいというのに、コレンタは未だに皆、石のままで月の光を浴びているのだろうか。
あの呪いは一体どうしたら解くことができるのだろうか……