籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
「一体何が目的なの?」
「言うつもりはない。お前はせっかくの宝石をあちこちにばら撒いてしまったし……」
「宝石? やっぱり、あの宝石に何か秘密があるのね?」
ティアナは自分の体が小さくなっていることも忘れて、男に向かって力の限りに叫ぶ。
「国を、皆を、石にしてしまうなんて! 早くもとにもどしなさい!」
男はふっと笑った。
「石? 石にしたのはお前だろ?」
「え……」
「お前が魔法の指輪を使いたいと、そう願ったから指輪は力を発揮した。石化の魔法を使ったのは、お前自身だよ」
男がそう告げて顔を上げる。
いつもうつむき加減だったせいでフードに隠れて見えなかった男の目と、ティアナは初めて目があった。
男の紅い瞳に射抜かれ、ティアナは目を見開いたまま、体中が凍り付いたように動けなくなった。
心臓が激しく鳴っている。
自分の心臓の音だけがいやにはっきりと耳に響く。
この男は何を言っている?
ティアナが国を石にした?
ティアナの様子に満足したのか、男は笑いながらフードを引っ張り再び顔を隠した。
「さあ……今夜はここでお別れだ。あいつが帰ってきたようだ。準備ができたら、迎えにくるよ」