籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
男が姿を消すと同時に、ドアが開いた。
入ってきたマルセルは、窓辺で固まったままのティアナを見て首を傾げた。
「ティアナ? どうかした?」
「……なんでもないわ」
「顔色が悪い」
心配そうに手を伸ばしてくるマルセルの手を振り切り、ティアナはカーテンの奥に隠れた。
「なんでもない、疲れただけ。今日はもう寝るわ」
「……」
マルセルはそれ以上何も聞いてこなかった。
かわりにカーテンの端をそっとめくって、柔らかなハンカチを差し入れてくれた。
ティアナはそのハンカチに身をくるみながら、空を見上げる。
月は変わらず、明るく輝きティアナを照らしている。
いくらハンカチに包まれても、凍り付いたように手足の先が冷たい。
ティアナはマルセルたちに気づかれないように、涙を流し続けた。